「庭の千草」狂詩曲

カメラのフラッシュをたく音やシャッター音があちらこちらで鳴った。

炎天下の中、ヴァイオリンを奏でている詩月の額や頬、首すじに汗が滲む。

ブラームスのヴァイオリンソナタ第1番ト長調 Op.78「雨の歌」。

雫が落ちるような静かな旋律から始まる。

本来ピアノの静かな和音から始まる曲だが、ピアノ伴奏はない。

安坂貢のピアノ伴奏では納得できなかった解釈、貢の演奏では物足りないと感じた違和感、凍るほど冷たい雨。

胸を冷やす雨、命に忍び入る雨。

心の内に降る激しい雨は、演奏が進むにつれ優しく穏やかで暖かい雨に変わっていく。

愛おしく恋こがれて止まない最愛の人、友人シューマンの妻のために、ブラームスが思いをこめた曲だ。

失った命を愁い、嘆き悲しみ、打ちひしがれた友人の妻を慰め、労り励ます癒しの雨を奏でる。

詩月は哀愁の調べを切々と歌い上げた。