「庭の千草」狂詩曲

「ギリギリだが、まあいいだろう」

理仁は詩月が入院して以来、初めて笑った。

「左足はあまり変わりがないようだが」

「日本に居る間は続けるよ」

盆入り前日、詩月は退院した。

約1ヶ月の入院生活、退院してやっと思い切り息ができた気がした。

「たいへんだったわね」

詩月には詩子が理仁から詩月の状態を聞いているのか、入院する前よりも、気を遣っているように思えた。

詩月は約1ヶ月ぶりに、ミヒャエルとビアンカに連絡を取った。

彼らは「長い入院だったな」と不満げだった。

大学のエントランスホールの動画を視聴し、こちらの騒動を知って心配していると言った。

夕方。
1ヶ月、まともに触れなかったヴァイオリンの手入れを念入りにしていると、XCEON の遥が詩月が退院したことを知りメールしてきた。

「体、もう大丈夫? 病院にも張り込みが着いてたいへんだったね」と。