「庭の千草」狂詩曲

理仁と時任は病室を出ると、どちらともなく声をかけた。

時任はサッと身を引き、理仁の言葉を待った。

「時任くん、そう云うことだから。もし支えが必要なら頼む」

「はい」

「それから、まだ動画の影響が続いているから、外来エリアには近づけないで」

「はい」

時任はいつまで続くのかと思いながら、詩月の病室を振り返った。

「ところで、詩月はどうだ? とくに我が儘は言わないだろうけれど、手を妬いているだろう?」

「いえ」

「岩舘の身内だからと遠慮しなくていい」

「……そうですね。彼は感情をあまり表に出さないので、何を考えているのか……」

「あーー確かに」

理仁は時任が言い終わるのを待たず、呟いた。

「かと言って、無愛想ではないんだよな。患者や看護師たちからも、好印象だ」

「ですね、よく話しかけられていますし、黙っていても絵になるのは羨ましいです」