「庭の千草」狂詩曲

理久は店内の雰囲気がいつもと違うのを感じて、珈琲を一気に飲み干した。

「貢、落ち着かないな。知らないヤツらが多いと」

スッっ立ち上がり会計を済ませて、カフェを出た。

「貢、すまないが。詩月の事情は話せない」

「理久……?」

「俺たちが触れていい問題ではないんだ。詮索するな」

理久は辺りを見回し、内緒声で言った。

「マスターには申し訳ないけれど、しばらくモルダウは使えないな。斜め後ろの席はカメラを回していた」

「そうなのか」

貢は目を丸くする。

「そのようだ。遥が聖諒の音楽科に通っていてるんだ。あいつが大学生か」

理久と貢は大学正門前の坂道を下りながら、話した。

「ヘェ~、頑張っているんだな」

「で、向こうにはいつ戻るんだ?」

「20日のチケットだ。年内まで入賞のお約束演奏が幾つか入っている」