「庭の千草」狂詩曲

「その……左足に力が入らなかったのか? それから前から気になっているんだが、倒れる時」

詩月は「またか」とため息をつく。

「何故ギリギリまで我慢するのか。よく訊ねられるけれどーー余裕がない時の方が多いよ。左足は段階手術が終わるまでの血流不足で、運動神経の発達障害だから。……気づかない程度の軽い後遺症だけど、踏ん張りは効かない」

「そうだったな。我慢していない……考えたことがなくはないが、まさかな……兄貴は何て」

「理仁さんには我慢するなと言われるけれど、我慢しているつもりはないよ。それに僕は理仁さんが思っている以上に用心はしている」

詩月は納得がいかないという顔の理久の目をじっと見つめて、念を押した。

理久は詩月がギリギリまで我慢しているーー今までずっと、そう思ってきた。

詩月の様子を気がけて観てきたつもりだ。

詩月については、大抵のことは知っていると思ってきた。