「庭の千草」狂詩曲

今回は宗月の怪我はどんな具合かをよく訊ねられる。

演奏家生命は大丈夫なのかと。

「今はリハビリと時間が薬みたいだ」

詩月はそう答える。

迂闊なことは言えない。

怪我の具合がどうであれ、これからを決めるのは宗月自身だ。

執刀医は「指の神経断裂はない」と言った。

その他の怪我による後遺症は何とも言えないとも言った。

詩月がどうこう言えることなど、今は何もない。

「ピアニストではない周桜宗月は認めない」

詩月が宗月に突きつけた言葉だ。

詩月は宗月がどう受け取ったかどうかは聞いていない。

頑張れとか、大丈夫だ心配ないーー詩月にはそんな言葉をかける余裕はなかった。

それ以上にピアニストとして復帰して欲しかった。

宗月には越えなければならない存在として、健在でいてほしい。

目標として、失うわけにはいかないーーそう思った。