「庭の千草」狂詩曲

3階まで吹き抜けで、イベントホールからのピアノ演奏は外来エリアまで音がよく響く。

外来エリアからイベントホールは、はっきりとは見えない。

「同じ曲だよね、あの動画と」

「詩月?」

大学のエントランスホールでの演奏の動画が再生回数を伸ばしている分、詩月のピアノ演奏に院内がざわついていた。

「昨日はありがとう」

詩月は「雨の歌」の演奏を終え、最前列の患者たちに声をかけた。

「水分、ちゃんと取ってる?」

「昨日はとくに暑かったものね」

「用心しなきゃ」

「気をつけるよ」

詩月はとりあえず、静かに笑ってみせる。

水分制限でじゅうぶんな水分補給はできないし、用心はじゅうぶんにしている。

本音は、キッパリと言いたかった。

「エントランスホールで演奏した曲『ブラームスの雨の歌』忘れられない大事な曲なんだ」

「もしかして昨日の会話……」