「庭の千草」狂詩曲

詩月は華奢だが見た目は普通、病人には見えない。

言われなければ、心臓病で体が弱いとは思えない。

詩月は病室に戻ると、何度もため息をついた。

「和哉さん、心配をかけたね。処置室の外に居た人たちにも」

ポツリ言うと、黙りこんだ。

頑なに、心の内を読まれまいとしているように思えた。

能面を1枚貼り付けたような、凍りついた表情だ。

憂いを帯び大人びた顔で、何処かを見ているようで、何処も見ていない。

時任は詩月の病室を出た後も、詩月の様子が気になっていた。

あんな顔、するんだなと。

ーー同じ病棟に入院している患者なのに大変な違いだ

時任はたびたびナースコールを鳴らし、看護師を呼びつけ暴れている患者を思い浮かべた。

患者なら思い通りにならない体への不安や苛立ちは、誰にでもある。

なのに、たびたび八つ当たりされては、看護師はたまらない。