「庭の千草」狂詩曲

理仁は詩月の様子が落ち着くと、時任に「すまないな」と言った。

「詩月は寸前まで言わないんだ。我慢しているのか、寸前まで気づかないのか。俺にもわからない」

「ーー立ち上がった途端にふらついたので、私も体調の変化に気づけませんでした」

「世話をかけるね。ペースメーカー設定変更後の観察と、本人の数値がもう少し安定するまで入院させようかと思っているんだ」

時任は理仁が主治医と云うより、家族の顔になっていると感じた。

詩月は叔父の息子だと聞いている。

身内の主治医と云うのは、何かと心配が募るに違いないと。

「手術後も根治したわけではないからね」

時任は詩月の心臓病がどう云う状態だったのかは、簡単には知っている。

どう云う手術だったのか、予後はどう云う症状が起こりやすいのか、同じ心臓病の患者を看たこともある。

同じ心臓病で同じ手術をしても、それぞれ同じ症状とは限らない。