「庭の千草」狂詩曲

「君のことを話しているようだ」

時任が詩月に小声で話しかけた。

「……らしいね」

花海棠の木を隔てたベンチでの会話は、筒抜けだ。

西陽を避けて数本植えられた木は、4月には淡紅色の花がみごとに咲く。

中庭には他に東南の方角にモッコクが植えられている。

他にはイロハモミジ、春は黄緑色、秋は深紅やオレンジ色に色づく。

寒暖の差が激しい場所ほど色が鮮明になる。

季節感のある中庭だ。

「何を演奏したんだ?」

「ーーブラームスだよ。先輩のコンクールでピアノ伴奏をした曲。解釈が難しくて、コンクールとは別解釈で演奏したんだ。人さまに聴かせられるような演奏ではなかったんだけど」

詩月はばつが悪いのか、楽譜から目を離さない。

「ブラームスとショパン、得意なのはどっち?」

「えっ……!? 考えたことはないけれど」

詩月は言いかけて、心の内で呟く。