「庭の千草」狂詩曲

「用がある時は連絡入れて」

医療用スマホを見て、詩月は頷いた。

時任が病室を出ると、詩月はホッとひと息ついた。

ペースメーカーを植え込んだ時のことを思い返した。

詩月は自分の体に機械を植え込まなければ制御できないことが悔しくて、辛くてならなかった。

ペースメーカーを植え込むこと自体が恐かった。

今回、ペースメーカーの点検を数ヶ月に1度おこなうことの大切さを改めて思い知った。

わずかな制御のズレで体調を左右される。

詩月の生まれつき壊れている心臓は、3度に分けて段階的に手術したけれど、正常には動いていない。

そんな脆弱な体と、ずっと付き合っていかなければならないことを思い知った。

詩月は祖父や祖母を始め、たくさんの人の支えがあって、自分の命が今あることを噛みしめた。

クレアがもし「産みたい」と言わなかったら。