「庭の千草」狂詩曲

理久は無理もないと思った。

もし自分が父親と血の繋がりがないと知ったらと思うと、平然を装おってなどいられないと。

「でも思い返してみたら、いつ気づいていてもおかしくなかった。こんなこと、理久以外には言えない」

「俺で良ければ。聞いてどうこうできるかは別だけど」

「どうこうするのは最後は自分自身だ」

「大丈夫か?」

「僕は1人ではないと解ったから。血は繋がっていないけれど思いは伝わってきたから」

「そうか。今日の当直はおふくろと兄貴だ」

「理久。退院したら、モルダウで演奏したい」

カフェ・モルダウは聖諒学園大学前の喫茶店だ。

音楽学部の学生が各々の腕試しに競って演奏する。

店内にBGMは流していない、学生の演奏がBGM代わりだ。

店内中央には、2台のグランドピアノがでんと置かれている。

マスターは聖諒学園大学、音楽学部のOBだ。