「庭の千草」狂詩曲

理久が病室に入ると、詩月はサッと体を起こした。

「少し吹っ切れたか」

「詩子さんと彩月さんが話してくれたから」

「そうか。大学の事務局から連絡があった。書類ができているから、いつでも取りにきていいと言っていたけれど、俺宛てに郵送してもらうことにした」

「ありがとう」

「ホールのピアノ、演奏したんだって」

「うん。看護師はご機嫌斜めだったよ。詩子さんと彩月さんが病室の前に居てくれて、小言を聞かずに済んだ」

「時任といったか」

「彼は気が利くし、空気が読めるね。煩わしくない」

「人気があるヤツらしいぞ」

「仏頂面だけどね」

「ヘラヘラしているヤツだと不安になるだろ」

詩月は理久に言われて、クスッと笑った。

「酸素分圧、数値が低いんだってな。それと貧血」

「父さんが怪我で入院してからずっと、眠れなかったから。父さんの怪我よりも自分のことで」