「庭の千草」狂詩曲

「今夜は当直。さっき、夕食と夜食を届けてきたわ」

「大丈夫か」

「今夜は理仁も一緒だから」

詩子は鍋を温めながら、上機嫌だ。

「理久、浴槽は洗ってお湯入れてきて。もうすぐ亮月さんが帰ってくるから」

詩子は保育士を退職した後、家事を満喫しつている。

何をするのも楽しそうだ。

ーー詩月の心臓を治してやりたくて医者になろうと思ったんだ

理久は病室にいる詩月の顔を思い浮かべた。

理久が1才の時。

隣に住む祖父の家に叔父の宗月がクレアを連れて、帰国した。

理久の家は総合病院で、両親が共に医者をしているため、理久は多忙な母親よりも祖母と居る時間が長かった。

理久は隣に住むようになったクレアに興味津々だった。

数ヶ月後。

クレアは出産したが、出産直後から、病院と家を行ったり来たりしていた。

生まれてきた詩月はずっと入院したまま、何ヵ月も家に帰らなかった。