「庭の千草」狂詩曲

詩月は久しぶりに、熟睡できた。

宗月が怪我で入院して以来、ずっとまともに眠れていなかった。

寝たと思っても15分経たないうちに目が覚めて、睡眠薬も殆んど用をなさなかった。

詩子と彩月の話は、詩月を安心させた。

「周桜詩月でいいんだ」と。

とくに祖父亮月の言葉が、心に響いた。

他の詩子と彩月の話には、憶測や願望が含まれている気がして、心が動かなかった。

「周桜の名前には代々「月」の字がついている。周桜の孫には『月』をつけるんだ」

詩子がそう話し終えた直後、詩月の頬に涙が伝った。

詩月は詩子の胸に抱きしめられたまま、崩れるように気を失った。

「誰がどうしてとか、何故とか、そんな話よりも人の心を動かす言葉があるのね」

「悔しいけれど、お父さんに全部持っていかれたわ。お父さんたら、ずるいわ」

詩子と彩月は病室を出て笑い合った。