「庭の千草」狂詩曲

詩月の顔には表情が見えなかった。

詩月の感情の揺れさえ感じられないほど、淡々としていた。

詩月の目が、何処を見ているかも定かではなかった。

「当たり前で疑いもしなかったルーツが違っていたーーそれを受け入れられない」

「……詩月」

詩子がため息混じりに呼んだ。

身を乗り出し、詩月を抱き寄せたかと思うと、ギュッと抱きしめた。

「血の繋がりなど関係ないわ。あなたは私の孫、宗月の子だわ。あなたを他人だと思ったことなどないわ」

詩子の隣で彩月が大きく頷いた。

「あなたが産まれてきた時、どれほど嬉しくて、どれほど心配したか。生まれて直ぐにICI室や手術室に運ばれて行く時は、身を切られるほど辛かった」

「本当に深刻な状態だったのよ。留学できるほど元気になるとは思えないほど、深刻な状態だったのよ」

「詩月。あなたが居なければ、クレアはどうなっていたかわからない。あなたのおじいさん亮月さんはね、自分の名前とわたしの名前から1字ずつ取って、あなたを『詩月』と名づけたのよ」

祖父は亮月、父は宗月、叔母で宗月の妹は彩月。

「周桜の名前には代々「月」の字がついている。周桜の孫には『月』をつけるんだ、と」