「庭の千草」狂詩曲

詩月は肩で息をつく。

長年、通院し入退院を繰り返している患者も多い。

詩月が知っている患者も何人か居て、詩月の病状を知っている患者も居た。

「どうした、良くないのか?」

「帰国ついでに検査入院しているんだ」

「理仁先生は慎重派だけど」

「んーー少し数値が下がっているらしい」

「そうか、無理はするなよ」

「ありがとう」

詩月が車椅子を動かそうとすると、時任がサッと車椅子のグリップを握った。

「病室に戻るんだろ」

「和哉さん、自分で戻れるから」

「爪の色、気づいて言ってる?」

詩月は時任に言われて、爪の色を確かめ、赤紫色に変色しているのを観て気分が萎えた。

時任が車椅子をゆっくりと押し始め、詩月は黙って身を委ねた。

自分が思っている以上に、体は正直だと観念するほかなかった。

「数値を甘く見ない方がいい」

時任の声は冷たかった。