「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)

「顔を会わせたら、きっと……例の話になる。今、話すことだとは思わないから」

ユリウスたちには、詩月が平常心で言っているとは思えなかった。

「俺も一緒に行く。ゆっくり列車で戻るか、詩月?」

詩月は静かに頷いた。

エィリッヒはユリウスの肩に手をかけた。

『任せておけ』

ユリウスの耳元で囁いた。

「行くか」

エィリッヒが詩月に促し、処置室を出た。

「良かったのか?」

「うん。ユリウスたちにも余計な気遣いをさせたくないから」

詩月はフッと笑った。

「無理して笑わなくていい。俺とお前しかいない」

「うん」

詩月は短く答えて、またフッと笑った。

ウィーン駅の改札を通る前。

詩月はコンクール運営側に、コンクール会場に戻る旨を伝えた。