「庭の千草」狂詩曲

詩月は1日、間を置いて大学を訪れた。

区役所で諸々の手続きに必要な書類を用意し、事務局に提出し、学長にコンクールの結果報告をした。

「ピアノ部門は今回、レベルが高かったようだな。君でも入賞を逃すとはな」

学長は苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「コンクールは正確性を重視しますから、僕のような癖の強い演奏者には辛口評価なのかもしれません」

「ずいぶん弱気だな」

「いえ。コンクールに入賞すると、主催の用意したコンサートスケジュールに追われて、かなりハードなので、入賞を逃して少しホッとしているんです」

「正直だな、君は。お父上の怪我の具合はどうだね?」

「暫くリハビリに専念するようです。思っているより元気そうですけど」

「事故で怪我と聞いた時はどうなることかと思ったが。君は確かコンクールの最中だっただろう」

「知らせを聞いたのはファイナルの演奏の後でしたから」