「庭の千草」狂詩曲

詩月は言いながら、理久の汗を拭った。

お参りを終え、教会の神父に挨拶すると神父が詩月のヴァイオリン演奏を絶賛した。

神父から教会のチャリティーに是非とも演奏してほしいと言われたが、ウィーンへ戻る予定だと言うと残念だと肩を落とした。

その後、車に乗り込みリリィの自宅へ向かった。

リリィ亡き後、リリィの自宅はリリィの息子夫婦と孫娘が住んでいる。

詩月がリリィ宅を訪れるのは、ウィーン留学を報告に行って以来、約2年半ぶりだ。

「まあ、詩月くん!」

リリィの息子嫁、鈴子は詩月を出迎えるなり感極まったのか、詩月を両腕で抱きしめた。

「いきなり訪ねてきてすみません。昨日、帰国したので」

詩月は戸惑った様子もなく、淡々としていた。

「夏休み? ゆっくりできるの?」

「ええ、まあ」

「さあ、上がって。今、お茶を淹れてくるわ。お墓の方にも行ってくれたの?」