「庭の千草」狂詩曲

「そのヴァイオリンはーー」

「リリィのヴァイオリンだよ。リリィのお墓参りに行こうと思って」

詩月は必要なものを部屋に置き、ヴァイオリンの師匠リリィの形見のヴァイオリンを抱えていた。

ご丁寧に黒いスーツに着替えている。

「お墓参りの後、リリィのお宅へ挨拶も。それから鉄面皮師匠にも」

詩月が鉄面皮師匠と呼ぶのはリリィの弟子で、詩月がリリィの後に師事しているヴァイオリンの師匠だ。

「それなら大学の方も」

「大学は明日以降でもいいかな。役所の書類も必要だし。学長には厄介ごとを頼まれそうで」

「確かに、あの学長は強引だな」

理久の運転する車でリリィこと千住百合子の墓に向かった。

キリスト教の洗礼を受けていたリリィの墓は、礼拝堂を通り抜けた先にある芝生園にある。

詩月は花屋で買い求めた花束を供え、念入りに手を合わせた。