「庭の千草」狂詩曲

詩月の衝撃を考えると気の毒を通り越し、詩月にどう声を掛けていいか、ブレーキがかかる。

「詩月には笑っていてほしいんだがな」

理久は詩月が眠ったのを確認し、ベランダへ出た。

詩月の前では決して吸わない煙草を取り出し、ふかす。

数年前から紙煙草はやめ、電子煙草を吸っている。

喫煙できる場所が、めっきり減った。

嫌煙権も気に留めなければならず、食後の一服もままならない。

「何で今まで気づかなかったかな、俺は」

理久はフゥーとため息をついた。

「詩月のことは何でも知っていると思っていたのにな」

ため息しか出なかった。

電子煙草を最後まで吸い切る。

「ダメだーー平常心、平常心」

理久は口に出し、両頬を叩いて気を引き締める。

パンパンと頬が鳴り、ジンジンした。

詩月にはこちらが動揺していることを悟られてはならない。

ベランダから部屋に戻ると、詩月は寝息を立てていた。

ずっと、ぐっすり眠れずにいたんだろうと思った。

遠慮がちにポツリポツリと話した詩月の顔が浮かんだ。