「庭の千草」狂詩曲(ラプソディー)

「はい。でも僕が頼むより前に、理久が僕を」

「あっ!……あの子、せっかちであの調子だから具合が悪い時にはちゃんと言うのよ」

理久の祖母は思うところがあったのか、ハッとして、慌てて言い直した。

理久が湯加減を確認し戻ってくるなり、詩月に訊ねた。

「詩月、一緒に入るか? 久しぶりに」

「うん」

理久が理久の祖母、詩子とアイコンタクトをすると、詩子はホッしたような顔をした。

「着替え、脱衣場に用意しておくわね」

「ありがとう。お先に」

1番風呂に入ることを気兼ねさせないための配慮と、詩月が1人で入った時のもしもを考えての用心だ。

岩舘家は詩月が帰省すると連絡してきた時、詩月への対応を細かに話し合っている。

詩月はそれを感じとった。

理久の祖母、詩子(うたこ)は周桜宗月の母親で、詩月と理久にとっては祖母だ。

長男の宗月が周桜家を継がず、ピアニストになったため、宗月の姉、彩月(さつき)が家を継いだ。