「庭の千草」狂詩曲

ウィーンから成田まで約13時間半。

詩月は機内でポータブル医療酸素濃縮器を使用し、安坂と殆ど話さなかった。

「たぶんダウンしていると思う」と言った通り、座席に凭れかかり安静にしていた。

成田空港に到着すると、詩月は岩舘理久の迎えで家に戻った。

「兎に角、一先(ひとま)ずゆっくり休め」

岩舘理久は宗月の姉夫婦の息子で、医大生だ。

「具合はどうだ?」

「疲れ以外、とくには」

理久はエアコンと加湿器のスイッチを入れた。

詩月が戻ってくると聞き、詩月の部屋のエアコンも手入れをしたと、空港からの道すがら話していた。

日本の7月はオーストリアの7月よりも暑かった。

「様子は観に来る」

詩月は理久が部屋を出ると、荷解きをした。

ヴァイオリンを手荷物専用ケースから出し、不具合はないかを確かめ、本来のケースに入れ換えた。