「庭の千草」狂詩曲

ユリウスたちは淡々とした医師の口調と仕草を恨めしく思った。

宗月は腱鞘炎に苦しむクレアを献身的に、支えていた。

ーー誰もが羨む仲だっただろ

「ユリウス、手術室前に戻れ。マルグリットが心細いだろうから」

エィリッヒはユリウスの肩をポンと叩いた。

「詩月は俺が観ている」

「ああ。エィリッヒ、血液型の件は……」

「知らないことは話せないさ」

立ち上がるユリウスに、エィリッヒの声が虚しく響いた。

「頼んだぞ」

ユリウスが重い足取りで処置室を出ていく。

どちらともなく、ため息を漏らした。

これが現実でなければいいと、口には出せない。

迂闊なことは言えない。

ーー全く何と云う1日だ

エィリッヒは長いため息をついた。

一定の間隔でポタポタと落ちる点滴を見つめた。

ーー宗月には余程の理由があったのだろうけれど

エィリッヒは詳細が解らないまでも、宗月とクレアが今までよく隠し通していたものだと、思えてならなかった。