「庭の千草」狂詩曲

教授は、クレアに託したヴァイオリンの特異性を誰より気にしていたのだろう。

クレアが影で「ローレライ」と呼ばれていたことも、ヴァイオリンが忌み嫌われていたことも、知っていたに違いない。

「宗月。クレアの伴奏が君で良かった。感謝をどう伝えていいのか」

「いえ、俺は何も。クレアが頑張った結果です」

平静を装い、澄まし顔でこたえた。

俺は内心、クレアの優勝が飛び上がって喜びたいくらいに嬉しかった。

教授はコンクール開催中の間に、かなりやつれたように見えた。

クレアを見守るために、クレアの演奏を聴くために気力を振り絞り、持ちこたえているのだろう。

ユリウスとエィリッヒから夜中に何度か咳き込み、病院へ走ったと聞いている。

食事の量も減り、栄養ドリンクを飲んだり、点滴で補っているようだ。

クレアの前では、気丈であろうとしているのを感じる。