「庭の千草」狂詩曲

わたしの前のコンテスタントの演奏が終わると、割れるような拍手や歓声に観客席が沸き上がった。

舞台袖で鳴り止まない歓声と拍手を聞きながら、このコンテスタントを越える演奏でなければ、優勝できないと思った。

緊張で体が強張る。

「大丈夫だ。君は最強だ」

宗月がわたしの耳に囁いた。

数分後、ようやく歓声と拍手が止んだ。

胸いっぱいに、大きく深呼吸した。

緊張を鎮め、神経を集中させる。

わたしは颯爽と舞台に立った。

チェコ出身の元ヴァイオリニストがアイルランド民謡を基に変奏を展開した「庭の千草変奏曲」(夏の名残りの薔薇)は、パガニーニ作曲「カプリース」よりも難しい。

パガニーニ作曲「カプリース」が、各曲ごとに用いる技巧が限られていたのに対し、複数の技巧が同時に出てくる曲だ。

美しい素朴なアイルランド民謡、ヴァイオリン奏法のあらゆる技術を詰め込んだ曲だ。