俺は中学や高校の頃、
陽キャの人を眺めて笑う、
通行人Aみたいな存在だった。
友達も多く、
主人公みたいな存在の陽キャの人を心の底では、
羨ましく思っていたのかもしれない。
でも、だからといって、
俺がつまらない人生を歩んできたわけではない。
地味ではあったが、
そこそこ楽しい日々は過ごせていた。
「お前が大学で失敗しないように、優しい先輩から良いことを教えてやる!」
一つ上の清水《しみず》パイセンが自信に満ちた表情で、
大学で成功するための極意を力強く教えてくれた。
中学や高校では、
通行人Aという脇役みたいな存在で、
主人公になろうとしなかったけれど、
清水パイセンの話を聞いて、
もしかしたら俺にでも主人公になれる可能性《チャンス》があるのではないのかと、
募る想いが一つまた一つと強くなっていく。
大学でもまた通行人A?
いや、もう脇役はごめんだ、
俺は今から始まる物語の主人公になるのだと決意表明をする。
昔の根暗だった自分とは決別《さよなら》し、
陽キャとして俺はこれからを生きていくんだ。
迎えた入学式当日、
地元を離れて広島の大学に入学した俺は、
今日から主人公になるんだと意気込んでいた。
そのはすだったけれど……根暗な俺は、
すぐに陽キャになれるはずもなく、
ガチガチに震えちゃって、
いつも通りの通行人Aをやっちゃってる。
それに、
知らない土地で知らない人を前に怖気《おじけ》付いた俺は、
話しかける勇気すら持てていない。
きっと中学や高校と同様に、
また通行人Aをやるんでしょう。
そう頭の中で通行人Aがちらついていると、
もうすでに入学式が終わっていた。
ヤバいよヤバいよ。
まだ友達すら出来ていない俺は、
明日は必ず友達ができると、
淡い期待を抱いている。
こうして始まった、
大学生活はお先真っ暗な感じで幕を開けたのだった。


