「ゆーう!! やっぱり僕も授業出るから、一緒に行こ〜……―――」
僕が駆け寄って行ったのにも気づかないかのように、惚けた表情の由宇。
もう一度声を掛けようと手を伸ばして―――ふと、気がついた。
―――波留は、由宇のことが好き。
―――由宇は、波留のことが好き。
このサイクルに僕の存在は、必要ない……?
必要ないどころじゃなく邪魔者なんじゃないのかと、思いが溢れていく。
由宇、と小さく掠れた声で呟いた。
今朝も、同じような声を出した。
だけど今と違って幸せだった。
それは、由宇がいたから。
―――由宇は僕の全て。
なのに由宇の心の中には、きっと僕はいない。
それが悲しくて―――前に出そうと上げた足を後ろに戻し、Uターンした。
再び保健室の扉を開けようと手を伸ばす。
「は……ハル、ト……?」
ドキッと、心臓が跳ねた。
そして、反射的に階段の影に隠れてしまう。
隠れなくても良かったはずだけど、こんな気持ちのまま由宇と接したくなかった。
きっと普段通りに振る舞えなくなって、由宇に当たってしまうから。
そのまま『好き』なんて口走ってしまおうものなら……きっと、後悔する。
「……気のせい、かな? 心配だなぁ……」
首を傾げて戻っていく由宇を見て、心が痛む。
気のせいじゃないし、心配しなくてもいいのに……。
波留のことを知らなかったときならきっと、勘違いしていただろう。
だけど由宇の『本命』を、知ってしまったから。
どうせ僕のことは『ただの幼馴染』としか思ってないんだって、分かった。

