少し眉を寄せ、まるで傷ついた小動物を見るような、優しい目で見つめている。
その目には、責める気持ちは全く見えない。
「す、すみません……」
篠塚さんは、まるで壊れ物を扱うように、丁寧に私のスマホを拾い上げてくれた。
彼はひび割れた画面を見つめて、それから私を見た。
「これ……僕が不注意で、肘をぶつけてしまったようです。申し訳ありません」
「え?」
私は混乱した。
彼はぶつかってなどいない。私が勝手に落としただけ。
それなのに篠塚さんは、まるで自分の責任であるかのように、周囲に軽く頭を下げた。
どうして……?
「大丈夫ですか!?」
司書の方が駆けつけて、すぐに掃除用具を持ってきてくれた。
「すみません、ありがとうございます」
篠塚さんは、床に散らばったガラス片を集め始める。
その動作は、一つ一つが驚くほど丁寧だった。
ガラス片の処理が終わると、篠塚さんは私に向き直る。
「あの……藤崎さん、ですよね?」
彼は私の名前を呼んだ。
その声は、メールで読んでいた文章よりも、ずっと柔らかかった。
「は、はい……篠塚さん……」
彼は少し驚いたような表情になったが、すぐに穏やかな笑顔になった。
「やっぱり。あの……ここだと、落ち着いて話せませんよね」
篠塚さんは、ひび割れたスマホを私に返しながら言った。
「近くに、静かで良いカフェがあるんです。せめて、お詫びにお茶をご一緒させていただけませんか?」
「え?」



