周囲の人々が、何事かと一斉に振り返る。
本を読んでいた学生。資料を調べていた年配の男性。司書の女性。
そして……隣の席の、篠塚さん。
みんなの視線が、私に注がれる。
床に散らばったガラス片。蜘蛛の巣状にひび割れた画面。最新のスマホが、無残な姿で床に転がっている。
「あ……」
声も出なかった。
顔から、血の気が引いていく。
非の打ちどころのない私の仮面が、ガラス片と一緒に床に散らばっていくようだった。
みんなが見ている。篠塚さんも見てる。よりによってこんな恥ずかしい姿を、クライアントに見られてしまった。
「すみません、すみません……!」
震え声で、必死に周りに謝った。
床に膝をついて、ガラス片を拾おうとする。
けれど手が震えて、うまく拾えない。視界が滲む。
だめだ、泣いちゃだめ。
「……大丈夫ですか?」
低く落ち着いた声が、ガラスの破片の音を溶かすように響いた。
顔を上げると、篠塚さんが立ち上がっていた。



