その夜。打ち上げが終わり、私と篠塚さんは二人で街を歩いていた。
冬の夜空には、無数の星が輝いている。
「今日は、本当にありがとうございました」
篠塚さんが何度も頭を下げた。
「いえ、こちらこそ。このプロジェクトで、私の人生が変わりました」
「僕もです」
篠塚さんが立ち止まった。
図書館の近くの、小さな公園。
あの日、スマホを落とした図書館。すべてが始まった場所。
「希さん」
篠塚さんが、私の名前を呼んだ。下の名前で。
「はい」
鼓動が、速まり始める。
「プロジェクトは、これで終わりです」
「……はい」
篠塚さんが、私の両手を取った。冷たい夜なのに、彼の手は温かい。
「僕、ずっとあなたに言いたいことがありました」
篠塚さんの声が震えている。
いつも穏やかな彼が、今は緊張している。
その姿が、愛おしくてたまらなかった。
「図書館で希さんに会った時から……いえ、その前から……希さんのメールを見るたびに、胸が高鳴っていました」
「篠塚さん……」
「でも、僕たちはクライアントと制作者。だから、プロジェクトが終わるまで、この気持ちを伝えてはいけないと思っていました」
篠塚さんが、私を真っ直ぐ見つめる。
「けど、もう我慢できません」
その瞬間、世界が静止したように感じた。
「僕は、あなたのことが好きです」



