張り詰めた空気の中、息をするのも忘れた。
パチ、パチ。
最初に拍手をしたのは、一番後ろに座っていた老夫婦だった。
「ありがとう」
老婦人が、目を潤ませながら拍手していた。
「私たち、このお店で結婚記念日のケーキを、50年間買い続けてきたんです。このサイトを見て、ああ、この店はこれからも変わらないんだって、安心しました」
その言葉に、会場中が温かい拍手に包まれた。
拍手が、次第に大きくなっていく。
「素晴らしい!」
「武男さんの店の想いが、伝わってきました!」
常連客たちが、立ち上がって拍手してくれた。
武男さんも、ゆっくりと立ち上がった。
そして、私のところへと歩いてくる。
「藤崎さん」
武男さんの目には、涙が光っていた。
「60年間、この店をやってきて……時々、不安になったんです」
武男さんの声が掠れている。
「こんな不揃いなお菓子で、いいのかって。もっと機械で作った方が、お客さんは喜ぶんじゃないかって」
「武男さん……」
「でも、あなたが言ってくれた。『整っていないからこそ、温かい』って。その言葉で、私の60年間が、肯定された気がしたんです」
武男さんが、深く頭を下げた。
「本当に、ありがとう」
私も、視界が滲んできた。
「こちらこそ。武男さんに出会えて、私の人生が変わりました」
私たちは、抱き合った。
会場中が、祝福の拍手に包まれる。
篠塚さんも、目を潤ませながら手を叩いていた。



