木曜日、午後2時。パティスリー・ルミエールには、たくさんの人が集まっていた。
武男さん、篠塚さん。そして、お店の常連客たち。
80代の老夫婦。40代の主婦。20代の若いカップル。
みんな、この店を愛してくれている人たちだ。
「それでは、始めさせていただきます」
私は深呼吸をして、プレゼンテーションを始めた。
「みなさま、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」
声がわずかに震えている。
「私は、藤崎希と申します。パティスリー・ルミエールのWebサイトを制作させていただきました」
スクリーンに、トップページが映し出される。
「このサイトは……」
緊張で、私は言葉に詰まった。
準備してきた原稿が、頭から飛んでいく。
どうしよう……。
その時、篠塚さんと目が合った。
彼は、優しく頷いてくれる。
「大丈夫」
そう言ってくれているように見えた。
私は原稿を見るのをやめ、心のままに話し始める。
「……このサイトは、完璧ではありません」
会場がざわついた。
「レイアウトは少し不揃いです。写真も、プロが撮ったような完璧なものではありません。だけど、それでいいんです」
私は、画面を指差した。
「なぜなら、このお店自体が、整いすぎていないから」
武男さんが、驚いたような表情をした。
「武男さんの作るタルトは、形が少し歪んでいます。焼き色にもムラがあります」
私は続ける。



