彼の手が、ゆっくりと私の手を包み込む。
私も、彼の温もりを確かめるように、そっと握り返した。
温かい……。
繋いだ手から、彼の脈が伝わってくる。速く、不規則に。
私と同じだ。篠塚さんも、緊張しているんだ。
その事実が、嬉しくて。私は、そっと親指で彼の手の甲を撫でた。
篠塚さんの手が、ぎゅっと強く握り返してくる。
スクリーンの光の中、二人だけの秘密の会話。
スクリーンには、エレーヌが走り去る場面が。不完全で、破綻していく恋。でも、だからこそ美しい。
そしていよいよ、映画のクライマックス。エレーヌが、愛する男を置いて一人、船で遠い国へと旅立つ場面。
私の目には、涙がにじんだ。
完璧じゃない人生、完璧じゃない愛。だからこそ、心を動かされる。
エンドロールが流れる中、私たちは手を繋いだまま、静かに座っていた。
◇
映画館を出ると、外は夕暮れが近づいていた。
「どうでしたか?」
「すごく……心を動かされました。完璧じゃない恋だから、こんなにリアルで美しいんですね」
篠塚さんの表情が、ぱっと明るくなった。
「藤崎さんも、そう感じてくれましたか」
「はい。不完全だからこそ、人間らしい。傷つくからこそ、愛おしいんだなと」
私たちは自然と歩き始めた。手は、まだ繋いだまま。
繋いだ手の温もりが、伝わってくる。篠塚さんの手は、思ったより大きくて、少しだけ硬い。お菓子を作る優しい手。
「藤崎さん、あの……」
篠塚さんが立ち止まった。



