土曜日の朝。私は、クローゼットの前で悩んでいた。
何を着ていこう。
そもそもこれは、デート……なのかな? 仕事の延長? それとも……。
最終的に選んだのは、ワインレッドのニットに、黒のスカート。普段はあまり着ない色だけれど、新しい自分を表現したかった。
鏡の前で、何度も確認する。メイクも、いつもより丁寧に。でも、濃すぎないように。
「これで、いいかな」
深呼吸をして、私は家を出た。
◇
午後1時。渋谷のシネマ・リュミエールの前で、篠塚さんが待っていた。
チャコールグレーのウールコートに、クリーム色のカシミアセーター。
シンプルだけど上質な装いの篠塚さんは、いつも以上に素敵に見えた。
「お待たせしました」
「いえ、僕も今来たところです」
篠塚さんが、爽やかに微笑む。
「藤崎さん。その色、よく似合っていますね」
「あ、ありがとうございます」
頬が、一気に熱くなる。
「それじゃあ、入りましょうか」



