店を出る時、篠塚さんが駅まで送ってくれた。
「藤崎さん、ありがとうございました」
夕暮れの道を、二人で歩く。
「祖父が、あんなに喜んでくれて……本当に嬉しかったです」
「私も、提案を受け入れてもらえて良かったです」
「このプロジェクト、藤崎さんお一人で進められるんですか?」
「はい。いつもそうしているので……」
「でも、チームで作った方が良いものができるんじゃないでしょうか。僕にも、手伝わせてもらえませんか?」
彼の言葉に、目を見張る。
「本当ですか?」
「はい。一緒に作りましょう」
私の胸が温かくなった。
「はい。ぜひ、お願いします」
駅に着いた。
「もし良ければ、明日の夜、一緒に作業しませんか? 『珈琲と本』で」
篠塚さんが、少し照れたように視線を逸らした。
「はい、大丈夫です」
「それじゃあ、また連絡しますね」
手を振って、篠塚さんが去っていく。
私は、その背中をしばらく見つめていた。
明日も……篠塚さんに会えるんだ。



