不完全な私を愛してくれたのは、年上の彼でした



「……違う」

その言葉に、私の血の気が引いた。

「やはり、駄目でしたか……」

「いや。今までのものと、格段に違う」

武男さんが顔を上げる。その目には、涙が光っていた。

「こんなにも素晴らしいものを、作ってくれるなんて……」

「え……?」

「これは……私の店だ。60年間が、ここにある」

声が、震えていた。

「藤崎さん。あなたは、私の想いを理解してくれた。本当に、ありがとう」

深く、深く頭を下げる武男さん。

「武男さん……」

私も、視界が滲んできた。

「ただ……一つだけ、お願いがあるんだ」

武男さんが視線を上げた。

「はい、なんでしょう」

「もっと、悠大のことも入れてほしい。この店は、私一人で守ってきたわけじゃない。悠大が帰ってきてくれて、新しい風を吹き込んでくれた。その想いも、サイトに入れて欲しいんだ」

篠塚さんが、目を見開いた。

「祖父ちゃん……」

「悠大、お前は私の誇りだ。そのことを、もっとみんなにも知ってほしい」

武男さんの言葉に、篠塚さんの目にも涙が滲んだ。

「わかりました。篠塚さんの想いも、必ず形にします」