「藤崎さん、君……これ、本気か?」
「はい」
「UI/UXの基本からは、少し外れているな。本当にこれで、顧客の心を掴めるのか?」
「わかっています。ですが、これが私の答えです。武男さんのお店のためには、『効率的なサイト』じゃなく、『想いが伝わるサイト』が必要なんです」
部長は、もう一度提案書を見た。
「面白いな。型破りだけど、確かに『らしさ』がある。このサイトを見たら、店に行ってみたくなる」
部長が微笑んだ。
「いいだろう。このまま、クライアントにぶつけてみろ」
「本当ですか!?」
「ああ。ただし……却下されたら、ちゃんと責任を取れよ」
「はい!」
私は深く頭を下げた。
◇
その日の午後、私は篠塚さんに電話をかけた。
「新しい提案ができました。明日、お時間いただけますか?」
「もちろんです。何時がいいですか?」
「午後2時頃、お店に伺ってもよろしいでしょうか」
「はい、お待ちしています」
電話を切って、私は深呼吸した。
「明日が、勝負だ」



