不完全な私を愛してくれたのは、年上の彼でした



「表情に出てるよ」

沙紀がサラダを食べながら言った。

「で? 何に悩んでいるの?」

私は、正直に話した。

「心が伝わるサイト」と「機能性」の両立について。武男さんの想いをどう形にすればいいのか、わからないこと。

沙紀は時折頷きながら、静かに聞いてくれていた。

「なるほどね。希ちゃん、まだ『正解』を探しているでしょ」

「え?」

「そんなものはないよ。希ちゃんが作るしかないの」

その言葉に、はっとした。

「正解がないなら、自分で作る。希ちゃんが感じたものを、形にするだけ」

「でも……」

「希ちゃん、昔と変わってない。いつも、誰かの期待に応えようとして。希ちゃん自身は、何を作りたいの?」

沙紀に聞かれるも、言葉が出ない。

「……っ、私は……」

「自分が、心から『これを作りたい』って思えるものを作りなよ。それが一番、相手に伝わるから」

沙紀が穏やかに笑った。

「希ちゃんは、もっと自分を信じていいんだよ」

その言葉が、胸に響いた。



午後。私はデスクに戻って、もう一度考え直した。

「私が、作りたいものは何か……」

目を閉じて、昨日のことを思い返す。

武男さんの笑顔。タルトの味。古い写真。店の空気。

そして、篠塚さんの言葉。

『藤崎さんの心が「これだ」って思うものを作ってください』

「そうだ……」

私は、ノートを取り出して、ペンを走らせる。いつものようにパソコンではなく、手書きで。