「希ちゃん、大丈夫? 顔、真っ青だよ」

「……ちょっと、プロジェクトで」

「また一人で抱え込んでない? 手伝おうか?」

「ありがとう。でも、大丈夫」

反射的にそう答えると、沙紀は少し寂しそうに眉を下げた。

「希ちゃんって、いつもそう。絶対に人に頼らないよね」

「ごめん……」

「謝らなくていいよ。でも、たまには甘えてもいいんだからね?」

沙紀の言葉が、私の心の最も脆い部分を突いた。

私の名前は、藤崎(ふじさき)(のぞみ)。28歳。Web制作会社でUI/UXディレクターをして6年。担当プロジェクトは40件を超え、クライアント満足度も悪くない──少なくとも、今日までは。

これまで求められてきたのは、効率性と機能性。的確な仕上がり。

それなのに、なぜ?

先ほどの篠塚さんの言葉が、頭の中で繰り返される。

私は今までずっと、正確性を追求してやってきたのに……。

それが「冷たい」と感じられているなら、私は一体何のためにこんなに頑張っているのだろう。