ショーウィンドウには、色とりどりの洋菓子が並んでいる。タルト、シュークリーム、マドレーヌ。どれも、少し不揃いだ。

けれど、その不揃いさが、なぜか心地よく感じられた。

私は深呼吸をして、ドアを開けた。

カランカラン。

古い呼び鈴の音がする。

「いらっしゃいませ」

カウンターから、穏やかな声が聞こえた。

エプロン姿の80代くらいの男性。背筋が伸びていて、目が優しい。タルトを丁寧に箱に詰めている。

「あの……藤崎と申しますが」

「ああ! 悠大から聞いているよ。Webサイトを作ってくれるんだって?」

男性──篠塚武男さんが、満面の笑みで迎えてくれた。

「ようこそ。悠大は奥にいるから」

武男さんが厨房に声をかけると、篠塚さんが出てきた。

「藤崎さん、いらっしゃい」

黒のエプロン姿。普段とは違う、親しみやすい雰囲気。

「お邪魔します」

「ちょっと待ってて。今、タルトを焼いているから」

武男さんがそう言って、厨房に戻っていった。

店内のイートインスペースには、古い木製のテーブルと椅子。壁には、古い写真が飾られている。

「あの写真……」

私は、一枚の写真に目を奪われた。若い男性が、小さな店の前で笑っている。