カフェを出ると、秋の午後の光が優しく私たちを包んでいた。

「それじゃあ、月曜日に」

篠塚さんが穏やかに笑う。

「はい。お店の住所、メールで送ってください」

「わかりました」

私たちは、そこで別れた。

帰り道、私は割れたスマホの画面を見つめる。

蜘蛛の巣状のヒビの向こうに、夕暮れの空が映っている。

不完全な画面。けれど、そこには確かに美しい空が映っている。

オレンジ色に染まる空。雲の形も不揃いで、色のグラデーションも均一じゃない。

でも、だからこそ、心を動かされるんだ。

コンビニの前を通りかかった時、文房具コーナーが見えた。

「手紙、書いてみようかな」

そう思った私は店に入り、便箋と封筒を手にレジへと向かった。



家に着いて、私は窓を開けた。冷たい秋の夜風が、部屋に流れ込んでくる。

私は机に向かって、買ったばかりの便箋を取り出した。

ペンを握る。万年筆じゃない、普通のボールペン。

スマホではなく、手で書くということ。それだけで、何かが違う。

一文字一文字、想いを込めながら私はペンを走らせる。