「Webサイトのリニューアルは、僕たちにとって大きな挑戦なんです。これがうまくいかなければ……」

言葉が途切れた。

私は、彼の手をじっと見つめる。

「だから、僕にはあなたの力が必要なんです。僕一人では、祖父の店を守れない。効率的な経営も、マーケティングも、何もわからない」

「篠塚さん……」

「でも、あなたには効率性がある。機能性がある。僕には人の心を感じ取る感性しかない。だけど、その二つが合わさったら……」

「何か新しいものができる」

私が続けると、篠塚さんが顔を上げた。

「はい。そうなんです」

「わかりました」

私は強く頷いた。

「一緒に、作りましょう。篠塚さんの感性と、私の技術を融合させた、新しいサイトを」

「本当ですか?」

「はい。だけど、私、どうすればいいのか、まだわかりません。『人の心』をどう形にすればいいのか……」

「それを、一緒に探しましょう」

篠塚さんが手を差し出した。

「月曜日、店に来てもらえませんか? 実際に祖父と話して、店の空気を感じてほしいんです」

「はい」

私は、その手を握った。包み込むような、確かな重み。

「必ず、成功させましょう」

窓の外では、夕暮れの光が美しく色づいていた。

気づけば、もう1時間近くここにいる。

時計を見ると、午後3時05分。

運命が動き出したのは、スマホを落としたあの瞬間──午後2時20分から。

そこから今まで、ちょうど45分間。