「見てるよ⋯⋯ずっと」

わたしの答えに奏人はとびきり優しい笑顔を見せてくれた。

「本格的に冷えてきたし、そろそろ中に戻るか」

「う、うん」

今のわたしはむしろ暑いくらいなんだけどこれ以上、奏人といたら心臓が保ちそうにないから星の観察はここまで。

部屋に戻ったわたしは海音ちゃんを起こさないようそっとベッドにもぐりこんだ。

まぶたを閉じるとさっきまで一緒にいた奏人の笑顔が浮かんで、別れたばかりなのにもう会いたくなってくる。

この感情をなんて呼ぶのか。

答えは小説の中にあった。

だって、今まで何度も書いてきたから。

目が合うだけで心臓が跳ねる瞬間を。

言われた言葉ひとつひとつを宝物のように感じる想いを。

手が触れただけで身体全部が心臓になったように脈打つ感覚を。

いつの間にか目で追っていて、別れた直後なのにまたすぐに会いたくなる恋しさを。


そんな女の子たちの物語をいくつも書いてきたのに、どうして自分の気持ちに気づけなかったんだろう。

この感情に名前をつけるならそれは“恋”以外考えられない。

わたしは奏人のことが好きなんだ──。

二泊三日の夏合宿は、わたしに大切なことを教えてくれた。