「ああ。だけど、同じ曲でも別の日だと観客の反応が百八十度違うこともあるんだ」


奏人は続けて「だから面白い」と言って笑った。

「咲茉の小説だって出すコンテストを変えたらまた違う結果になるかもしれないだろ」

奏人の話はまさに目から鱗が落ちるようだった。

わたしは選外という結果を突きつけられるたびに、また次の小説を書かないとって、そればかりを考えていたからだ。

今まで書いてきた作品は決して無駄なものじゃない。

今日、選外だった小説もいつかどこかで芽を出す日が来るかもしれないんだ。

「なんだか奏人ってあのお星さまみたい」

「星?」

わたしの指差した先を目で追う奏人。

「暗闇の中でわたしを照らしてくれるの」

夜空に浮かぶひときわ明るい星は一等星と呼ばれるものだ。

「さすが作家だな」

「ちょっと茶化さないでよ。本気で言ってるんだから」

「茶化したつもりはねーよ。咲茉らしい例えだなと思っただけだ」

夜空に輝く一等星を見ながら奏人は話を続けた。

「咲茉の一等星でいられるようにこれからも走り続ける。だから、俺だけを見てて」

奏人の両手がわたしの頬を包み込む。

熱を帯びた瞳に見つめられて、呼吸が止まりそうになった。