「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて⋯⋯?」
わたしは空いていた左半分に腰を下ろす。
ふわふわのマットレスと静寂に包まれながら、手を伸ばせば今にも掴めそうな星を見つめる。
なんて贅沢な時間なんだろう。
星を見続けていると、隣にいた奏人が羽織っていたシャツを脱いでそっとわたしの肩にかけてくれた。
「八月でも避暑地の夜は冷えるだろ」
半袖のわたしは肌寒さを感じながらも、この場から離れたくなくて我慢をしていた。
奏人の温もりが残ったシャツは冷え切っていた身体を温めてくれる。
それから風がシャツに残っていた奏人の残り香を運んできて、まるで奏人自身に抱きしめられているようだった。
心臓がドクンドクンと音を立てて、顔が熱をもつ。
外が真っ暗でよかった。
「あ、ありがとう。でも、奏人が風邪引いちゃうよ。わたし何か羽織るもの取ってくる」
デッキチェアから立ち上がろうとしたわたしの腕を奏人が掴んだ。
「俺は平気だからここにいろよ」
「でも⋯⋯」
「そんなに気になるなら咲茉が温めて」
そう言ってわたしの体に身を寄せた奏人。
「ち、近くない⁉」
肩と肩がぴったりと触れ合う距離に奏人がいる。



