「好き」があふれて止まらない!


「わたしたちの寮生活はまだはじまったばかり──。【完】と⋯⋯やっと書き終わった!」

わたしが合宿で掲げていた目標はコンテストに向けての作品を最後まで書き切ること。

まだ最後まで書いただけで読み直しの作業と清書は残ったままだけれど、一段落はついた。

執筆の妨げにならないように遠ざけていたスマホを手に取り時間を確認する。

「もう日付が変わってる。わたしもそろそろ寝ないと」

海音ちゃんとの相部屋に戻る途中、テラスに人影が見えた。

こんな時間に誰だろう?

わたしはテラスにつながるガラスの扉を開ける。

その先にいたのは、Tシャツ短パンに薄手のシャツを羽織った奏人だった。

「何してるの⋯⋯?」

「眠れないから星でも見ようかと思って」

空に向かって指を指す奏人。

見上げると真っ暗な夜の空に無数の星が輝いていた。

わたしたちの住んでいる街には光が多すぎて、これだけの星を見ることはできない。

昨日、花火をしたときにも星は見たけれど今日のほうが綺麗に見えるのは空との距離が近いからかな。

「咲茉も見ていけば?」


テラスには大人二人は座れそうなデッキチェアが一脚置いてあり、右半分に奏人が腰を下ろした。