夏合宿二日目も朝食と昼食時以外、MEBIUSはバンド練習、わたしは小説の執筆に励んだ。
コンテストに向けて書いている小説の山場についてずっと悩んでいたけれど、昨夜みんなと花火をしているときにヒントを得た。
ヒーローがヒロインへの気持ちを自覚する場面は寮生が花火をしているとき。これに決まりだ!
実際に体験したことだと、情景も浮かびやすいし筆も進む。
プロットとは少し違う展開になるけど、こういうときもあるよね。
別室でMEBIUSが頑張ってるからかな?
いつもより力がみなぎってくる。
次から次へと浮かんでくるストーリーに手が追いつかないよ。
最後の章のタイトルを決めているとき、コンコンとドアを叩く音が響いた。
「はい」
わたしが返事をした直後、開いたドアの隙間から海音ちゃんがひょっこりと顔を出す。
「どう? 進んでる」
「うん。いい感じだよ」
「山吹さんと夕食のバーベキューの準備をするんだけど咲茉はどうする?」
「わたしも一緒に準備するよ。机の周りだけ片付けたいから先に行ってて」
「OK。下で待ってるわ」
海音ちゃんと山吹さんを待たせないように急いで下書き用のルーズリーフと清書用の原稿用紙をクリップでまとめる。



