「⋯⋯俺もこの際だからはっきり言っておく。正直、咲茉と律が一緒にいるのは面白くねーよ」

「どうして?」

「咲茉のことが好きだからに決まってるだろ」

独占欲とか、嫉妬とか、ただの仲間に抱く感情じゃないことには薄々気づいていた。

咲茉の一番近くにいるのは俺がいい。

好きだとはっきり口にしたら心の奥の霧が晴れていくような気がした。

「じゃあ、俺たちは今から仲間でありライバルだな」

目の前に拳が突き出される。

律がこんなに熱い奴だとは思わなかった。

今、思うようなことではない気もするけれど、律とMEBIUSをやるのがこれまで以上に楽しみになってきた。

こんな話をすれば千里から音楽バカだと笑われるだろう。

「ああ。一歩も引く気はねぇよ」

律と同じように拳を握る。

ぶつかり合った拳はゴツンと鈍い音を立てた。